OOPSLA 2007(1)
今年のOOPSLAはオレゴン州のポートランドで開かれた。ポートランドはシアトルとサンフランシスコの間で、日本では知らない人も多いところだ。ポートランドへは、ノースウェスト航空が直行便を出しているが、個人的に好きではないので、あえてカナダ航空でバンクーバー乗り換えにした。
バンクーバーに着くと、成田のチェックイン時に言われた「いったんカナダに入国してください」というのとは違っていて、米国の入国審査があって、驚いた。いつもながら、予期せぬ事態は起こるものだ。いつも行っている中国とは違って、英語が通じるので(あたりまえか)問題もなく、楽勝である。ポートランド行きの飛行機を2時間ほど待った。いやな予感はしたが、やはり、機体はプロペラ機であった。1時間ぐらいで着く距離は、たいてい小さい飛行機が飛んでいる。ポートランド飛行場につくと、トラムが乗り入れているので、市内までは簡単である。トラムに乗って、ホテルの近くで降りたら、目の前にDouble Treeホテルがあり、これまた楽勝だ。やはり米国出張は精神的にとても楽である。
OOPSLAの初日は、基調講演のタイトルが「Designed Animism」であったため、スキップして、インターネットでメール送受信をやっていた。そのあと、デモセッションに参加して、Canooの新しいバージョンを見て、アスペクト・マイニングという話を聞いた。膨大なレガシーなコードからアスペクト候補を探し出してくるというもので、なかなか面白かった。ただ、サンプルとして、lockとかを出していたのはどうかと思った。もうちょっと面白いアスペクトを候補に持って来れるといいのに。デモは、Mac OSX で行っていて、Eclipseのプラグインとしてツールは実装されていた。OOPSLAに来ると、Macを持っている人がとても多い。やはりOOエンジニアにはMacなのかもしれない。
午後は、エージェント指向UMLやUMLモデルでの横断的要件の追跡の話があったが、用事があって聞けなかった。
夜は、「Design Patterns : Beginnings & Futures」というGoFのブリシデスの追悼があった。ヘルムは欠席でオーストラリアからビデオレターを送って来た。ということで、ガンマとジョンソンの二人で、ブリシデスとGoFのアクティビティを振り返って、Q&Aに答えるという内容であった。司会は、スティーブ・フレイザーがやっていた。私にはスティーブは、XPなどのコンファレンスでいつもがビデオ撮影をしていたという記憶しかないので、ずいぶんと中心に入って来たようだ。XPの仲間が出世していくのはとても嬉しい。
ブリシデスとは、「パターン・ハッチング」という本を日本語に訳したことで、ずいぶんと仲良くさせてもらった。日本に呼ぶからと話していたのに、ついに実現できなくなってしまった。彼からは多くのことを学んで、オブジェクト指向技術への多大なモチベーションをもらった。
懐古のビデオとして、GoF裁判が流された。裁判官の席には、ケント・ベックとマーチン・ファウラーがいて、被告人の席にはGoFのブリシデス、ガンマ、ジョンソンがいる。デザインパターンを作った罪で裁かれるという、アトラクションである。私もその場にいたので、懐かしく思い起こした。
ガンマもジョンソンもすでに白髪がかなり多くなってきて、多くの月日が流れたんだなあと思ってしまった。OOPSLAの参加者も年配の人が多くなって来ているので、そろそろ新しいことはここからはでてこなくなるのでは、とさえ感じた。自分もオヤジになったということでもあるが。
Q&Aでは、ブリシデスが一番好きなパターンは何かとかGoFというのは誰が付けたのかなどの質問が出た。GoFの由来については、パターンのメーリングリストでそう付けられたのであって、決してシカゴでチェーンを振り回していた訳ではないと答えて、静かな雰囲気の中、時折の笑いもでた。
長瀬 嘉秀