« アジャイルカンファレンス東京2010 と ReeL | メイン | アジャイルALM »

Open@ReeL の契約の考え方

Open@ReeL の公表前ではありますが、ReeL における契約についての考え方を
ご紹介したいと思います。

日本のシステムの受託開発においては、SIの一括請負契約が一般的です。
一括請負契約では、本来ならば契約時点でスコープ(開発内容)は固定されて
いるはずです。しかしながら、開発の後工程になってからの仕様変更=スコープ
調整が多発するというのが現実です。

このような仕様変更を受け入れるといった場合には、追加契約をしない限り、
既存の契約金額の枠内(=ベンダー側負担)で受け入れることとなります。
その為、ベンダー側ではこれを見込んで多額のバッファを積んでおくのが実状です。
結果的に、顧客からみたシステムの構築コストは高いものとなってしまいます。

○ アジャイル開発での対応

このような問題を解決する為には、アジャイル開発では固定スコープの契約形態
(一括請負)を否定し、可変スコープの契約形態(準委任等)を推奨します。

なぜ固定スコープを否定するのでしょう?
それは、顧客とベンダーの関係において、利益の相反構造を本質的に内包しているからです。
固定スコープでは一定金額の枠の中で作業をするので、作業量の増加を意味する
スコープ変動は、ベンダー側の利益を食いつぶすことになります。
つまり、仕様変更による顧客のメリットはベンダーにとっての不利益となるという、
綱引きが発生する構造になっています。
このような Win-Lose の相反構造は、顧客との協調を最重視するアジャイル開発
にとっては、相容れないものとなっています。

アジャイル開発では、Win-Win の関係を目指します。
仕様変更や機能追加によって、顧客もメリットを得て、ベンダー側も利益を得る
構造に変更する必要があります。
一般的には、準委任契約が向いていると言われていますが、金額に上限を付け
ないと、ベンダー側に機能追加を抑制するインセンティブが働かず、システム
が肥大化する欠点も指摘されています。
顧客との協調関係においては、上限付きの可変スコープな契約が、一定金額内で
最適なストーリーのポートフォリオを一体となって模索するという意味において、
もっとも望ましいと言えるでしょう。

○ Open@ReeL での対応

しかし、これまでの商慣習を鑑みるに、上限付き可変スコープの契約に、全ての
契約を移行するのは現実的ではありません。
その為、Open@ReeL では、固定スコープの一括請負契約をベースとして考えます。
そのベースの上に、Win-Win の協調関係のオプションを一部取り込んでいく二段階の
アプローチを採用します。

協調関係を保てるオプションには、様々な形態があるでしょう。
Open@ReeL のベースになっている「COMMONDATION-ReeL」では、目標コスト契約
を想定しています。
詳細は、以下の記事を参照して下さい。

「Agile Conference Tokyo 2010特別連載
第2回 COMMONDATION-ReeLの契約と要件管理」


それ以外にも、一部準委任契約を組み合わせる方式ですとか、請負金額に可変の
バッファ部分を設けて、余った分はインセンティブとしてシェアするような
方式も考えられます。

肝心なのは、顧客と契約時に Win-Win な協調関係で話を進める余地を一部に
設けることです。
たとえ一部であっても、そのようなスコープ調整の余地を設けようとすることで
顧客との話し合いは促進し、協調関係を改善させることができます。
また、一部に限定することで、顧客の関与度合を限定し負担を軽減させることにも
つながります。

このように、日本の実情に合わせて、アジャイル開発手法の適用方法を試行錯誤
してゆくことが大切であると考えています。

※ COMMONDATION は、株式会社日立システムアンドサービスの日本における商品名称(商標又は登録商標)です

アジャイルグループ グループリーダー 設楽 秀輔

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://pw.tech-arts.co.jp/cgi-bin/tamt5/mt-tb.cgi/89

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)